アイザワさんとアイザワさん
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朝になった。
鞠枝さんは私の様子を気にかけながらも、2、3時間おきに起きる玲くんをあやしたり、授乳したりと忙しい夜を過ごしていた。
子供が夜にそんなに起きることを知らなかった私は、何も考えずに押し掛けたことを申し訳なく思ってしまったけれど、鞠枝さんはいつものことだから気にしなくていいわよー、と笑いながら言ってくれた。
「結婚したって、別の心配事や闘いが待ってるんだから。付き合ってるうちの悩みなんて可愛いもんだよ。ねー、玲。」
ふにふにと玲くんの頬をつつきながらそんな事を言うから、思わず笑ってしまった。
鞠枝さんと話をしたことで心はだいぶ落ち着きを取り戻していた。
「ありがとうございました。」
とりあえずアパートに戻ろう。そう思い帰り支度を始めた私に鞠枝さんは、
「ちゃんと話しなさい。泣きたいことがあったら戻っておいで。『家族』なんだから遠慮しちゃだめよ。」
そう言いながらもう一度逃げちゃだめよ、と言って背中をポンと叩いてくれた。
頑張れと背中を押されたようで、その優しい手に助けられ、ようやく向き合う決心がついた。
「相澤さんが悪いコトしてるんだったら、茜さんと二人がかりでボコボコにしてやるんだから!」
……二人だったら、ほんとうに詰め寄っていきそうな気がする……。
黒い感情に飲み込まれそうな私を明るく励ましてくれるような、そんな鞠枝さんの言葉が嬉しかった。