アイザワさんとアイザワさん

私の恋人なんだから『部外者』なんかじゃないのに……。


私が瞬先生や大先生に会った時は不意討ちみたいなものだったし、二人のことは知っていたからびっくりはしたけど、緊張することはなかった。


樹さんのお母さんに会う時は同じように私も緊張しちゃうのかな……


これから自分の家族に会おうとしているのに、なぜか私はそんな呑気なことを考えてしまっていた。



「よぅ、初ちゃん。樹ちゃん。」


源ちゃんが陽気に手を挙げながらコンビニに入って来た。


そしてその勢いのまま、レジにいる店員さんに声をかけていた。どうやら、ここのお店も源ちゃんのホームらしい。


……相変わらず顔が広い人だ。



「樹ちゃん、緊張してるだろ?」


私達のそばに来ると、意地悪そうなニヤニヤ笑いを浮かべて源ちゃんが樹さんをからかってきた。


樹さんは否定することもなく「まぁ……緊張もしますよ」と誤魔化すことも諦めたような表情で答えていた。



樹さんは、私以外の人にはいつもからかわれているような気がするなぁ……



だから私が樹さんから余計にからかわれたり、意地悪されちゃうんだから、ほどほどにして欲しい。


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