アイザワさんとアイザワさん

唯ちゃんはこの後別の飲み会に合流するらしく「お疲れ様ですー。」とさっさといなくなり、茜さんは「ごめんね。明日家族で出掛けるから朝早いの。」一緒に帰れなくてごめん、と言いながら急いで帰って行った。

鞠枝さんは事務所まで一緒に行くよ、と言ってくれたけど、妊婦さんに支えるのを手伝ってもらう訳にはいかない。

「大丈夫ですから。」と言って鞠枝さんがタクシーに乗るのを見送ると、「歩きますよ」と声をかけ、私は相澤と肩を組んで事務所までの道を歩き出した。


***

預かった鍵でドアを開けて、事務所へと入る。
ここへ来るのは初めて相澤とオーナーに挨拶をした時以来だった。

「リビングの隣の部屋にベッドがあるから、適当に転がしておいて。」

とオーナーに言われていたので、そのままリビングの左側の部屋へと足を踏み入れた。

6畳ほどの部屋にベッドが置いてある。
後はクローゼットだけがある、シンプルな寝室だった。たまにここに寝泊まりしているのだろうか、私服が何着かかかっているのが見えた。

ベッドへと相澤を寝かせる。

睨むような視線を感じたが、それも一瞬で、やはり酔いには勝てないらしくすぐに目を閉じた。

やがてスー、スーと寝息を立てはじめた。


……はぁ、悪いことしちゃったなぁ。


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