アイザワさんとアイザワさん
「キャー、送り狼にならないでね、初花ちゃん。」茜さんがからかうような口調で言う。
……ならないよ!
茜さん……狼って……
しかも、今の状況で私から手を出そうものなら、後でどんな仕返しをされるか……考えただけでも恐ろしい。
オーナーはちょっと考えこんだ様子だったけど、ずっとここにいるよりも……と思ってくれたらしい。「おい、樹。鍵どこにある?」と事務所の鍵の場所を聞き出し、カバンを探って鍵を取り出すと「じゃあお願いね」と私に手渡してくれた。
私は相澤に近づき、「……ほんとにすみませんでした。送ります。肩につかまってください。」と言って上体を起こした。
相澤の手がゆっくりと肩に回る。思うように動けないだけで、ちゃんと言ったことは分かっているようだ。
そのまま、私は立ち上がった。事務所のあるマンションは徒歩で5分ほどだ。肩を組んで歩いていても、私のほうが背が高いから、余裕で支えられるだろう。
「初花さん、男前ですね。」
唯ちゃんの誉め言葉なのか、どうなのか、よく分からない一言でこの場は解散となった。