アイザワさんとアイザワさん

***

「初ちゃん、どうした?」

源ちゃんが私を心配そうに見ていた。
昔のことを思い出して、私が不安定にならないか心配してくれているんだろうな……。

「大丈夫だよ!源ちゃん。」私は元気良く答えた。

その時、お寺の住職さんが通りがかった。
……誰か来たか見てたかもしれない。


「あの、ここ、誰か来てましたか?」と聞いてみた。


「あー、若い男の人が来てましたよ。」と住職さんは教えてくれた。

……大先生じゃなかった。先生はもう還暦を過ぎているはずだ。


「今頃来るなんて誰だろうなぁ?てっきり水元(みずもと)先生だと思ってたんだけどなぁ。」と源ちゃんが言う。


……源ちゃんも同じことを考えてたんだ。


水元先生とは大先生のことだ。いろんなとこに友達のように気軽に出入りする源ちゃんは、デイサービスにも遊びに来ていて、あっという間に馴染んでしまっていた。


大先生はそんな源ちゃんを「仕方ないですねぇ」と笑いながら、『ボランティア』として出入りすることを許してくれたのだ。


「あとは、若(わか)先生かレオ先生のどっちかか?」

と源ちゃんは言った。

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