アイザワさんとアイザワさん

待ち合わせの場所に現れた相澤の車は、国産のコンパクトカーだった。

そのオレンジ色の車体を見ながら、何か勝手に左ハンドルな車を乗り回してると思っていたので、そのギャップにちょっと笑った。


「何笑ってんだよ。どうせ似合わない車に乗ってんな、とか思ってんだろ。」

……その通りです。


「車なんて、動かしやすけりゃ何でもいいんだよ。ほら、乗れ。」

と言いながらごく自然に助手席のほうに立ってドアを開けてくれた。


……慣れてんなー、と思いながらも「ありがとうございます……」とお礼を言いつつ車に乗った。

鞠枝さんは相澤が私のことを好きだと言っていたけど、この横に座っている女慣れをしてそうな男が、こんな何の取り柄もないような女のことを好きだなんてやっぱり信じられない。


なんか……育ちも良さそうだし。


半年一緒に働いてきて、言葉使いこそ乱暴な時はあるけど、接客の時や本社との対応の時など、他店で店長として働いてきたという点を除いてもきちんとしていて、育ちの良さが感じられることがいくつもあった。


エリア会議はスーツで出席するけど、相澤がさらっと着こなしているスーツは、たぶんブランドものだ。


私が着ているスーツは、就職が決まった時に「これから必要になるからね」と玲子お母さんが買ってくれたものだ。


自分ではとても手が出せない値段のもので、当時は申し訳なく思ったけど、こうしてハイブランド男の隣に立てるくらい上質なスーツを持っていて本当によかったと思う。
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