理屈抜きの恋
やたら身体をくねらせて。

「何か?」

「これ。先程副社長宛に届きましたぁ。」

彼女が俺に差し出してきたのは大きめの箱。
上目遣いで見てくる瞳は見なかったようにして、手には絶対に触れないように気を付けながらそれを受け取ると、意外に重い。
軽々と持っていたこの女性の力強さに少し驚いた。

「これ、差出人の名前がないけど?」

「あ、え?えっと、差出人は…小柄な若い女性でしたぁ。えっとぉ、えっとぉ、名前は確か…」

記憶が吹っ飛んだらしい。
力はあっても名前を忘れるなんて受付嬢としてはダメだ。
人事課に異動指示を出すか。

「総務課がいいか?」

体力と腕力がありそうだし。

「はい?」

「いや、なんでもない。それより用が済んだのなら出て行ってくれ。」

罰が悪いのか、力持ちの受付嬢は部屋を早々に出て行った。

そして扉が閉まるのと同時に箱に興味を示した彼女が席から立ち上がりこちらにやって来た。
でも恐る恐るといった感じが気になる。
< 102 / 213 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop