理屈抜きの恋
「で?最上くんのこと、どうして断ったの?」

さっきまで向かいの座席で話しを聞いてくれていた真美ちゃんと細井さんが、私を挟むようにジョッキごと移動し、密着してきた。

「狭いんだけど。」

「だって続きが気になるんだもん。大体、想像付いているけど。ね、細井ちゃん。」

コクっと大きく頷いた細井さんは、大きな瞳を意味ありげに向けてくる。

「当ててあげましょうか?」

参考までに、と両手を広げて二人に意見を求めると二人の声が揃った。

「「副社長が好きだから。」」

「なっ!?違うよ!?」

副社長付きの秘書になってから真美ちゃんと細井さんと女子会を開くのは今日が初めて。

秘書になってからの話が聞きたい、と言うから副社長との出会いから現在に至るまでの話をだいぶ端折って話したのだけど、その結果が『副社長を好き』とは理解に苦しむ。

「撫子さんってポーカーフェイスっぽいですけど、案外分かりやすいんですね。」

「撫子がポーカーフェイスだったのは恋をしていなかったからなの。あれだけのイケメンの最上くんにさえも恋心を抱かなかった頑固な心の持ち主なんだから。」

「いやいや、だから違うって。」
< 108 / 213 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop