理屈抜きの恋
その行動には自分でも驚いた。
なんでこんなに必死になっているんだろう。
なんでこんなに心がモヤモヤするんだろう。

「撫子さん。私、副社長のこと、本気で狙いに行きますよ。」

「ダメっ!」

「え?」

「あ…」

どうして?
どうしてダメなの?

好きになっても報われないかもしれないし、細井さんに敵わないだろうに。
最上くんを好きにならないのと変わらないじゃないか。

でも、嫌。嫌なんだ。

「本宮副社長の隣には他の女性が立って欲しくない。」

「それは副社長に恋をしているからですか?好きだからですか?」

「恋…?好き…」

そう言葉にした瞬間、ずっと燻っていた想いが確固たるものになった。
理屈なんて考えられない。
諦める理由が浮かぶ前に感情が先走る。
胸に熱いものが広がる。

「これが恋なの?」

それを聞いた二人が笑いを堪えていたかのように一気に吹き出し、そして盛大に笑った。

「わ、笑うなんてひどいよ!」

「アハハハハ。だから言ったじゃないですか!撫子さんが最上さんを振った理由は副社長が好きだからだ、って。」

「全く、細井ちゃんに感謝しなさいよ。この鈍感娘が。」

もしかして今のやりとりは全て細井さんの演技?
私に自分の気持ちを気付かせるための?

「撫子と副社長が話している姿を見たことがあるけど、あれを見たらすぐに分かるよ。」

「え?」

「恋なんて無意識のうちにしているんだよ。」

それって副社長にも知らず知らずのうちに気持ちがバレている可能性があるって事だ。
どうしよう。
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