理屈抜きの恋
何かを諦めたように切なく笑い、私から離れようとする最上くんの腕を掴み、引き留める。

「待って。話しは終わってない。」

「終わったよ。俺のことが好きでも、撫子が本当に好きなのは副社長だろ?」

そうだ、と答えたいけど、今の最上くんにそれを即答することが出来なかった。
その様子に気が付いた最上くんは私に向き直り、床に跪いて座っている私の視線の高さに合わせた。

「撫子?もしかして…今、迷っているのか?」

首を横に振って答えるけど、最上くんの目を見てはっきりと迷いはない、とは答えられない。

それは最上くんの強い想いを知ってしまったから。

純愛と言えるだけの強い想いを知ってしまったから。

「俺、絶対に幸せにする。撫子がいてくれればどんな事だって出来るんだ。笑顔だって取り戻せる。今まで通りの自分に戻れるよ。」

元に戻ってくれるならそれはどんなに嬉しい事か。
でも何かが違う気もする。
それがなんだか分からないのがすごくもどかしい。

「副社長と別れて、俺のところに来てくれないか?」

「ごめん。今すぐには答えられない。」

「分かった。でも可能性があるなら俺は諦めないから。」
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