理屈抜きの恋
破裂音は室内に静寂さを取り戻し、そこにいた3人の動きさえも止めた。

「撫子っ!」

先輩が頬を押さえて倒れている私の身体を支え、起こしてくれた。

そして呆然と立ち尽くしている最上くんの方へと進み、頬を思い切り平手打ちした。

「いい加減にしなさいっ!撫子を叩いてしまったのは間違いでも、私を叩いた姿を撫子が見て、どう思うと思うのっ!そこを理解しなさいって言っているのよ!」

「え…お、俺…」

私を叩いた手のひらと声が震えている。
先輩がその手を包み込むと、いくぶん和らいだけど、立っていられなくなり、しゃがみこんだ瞬間、全身が震え始めた。
それに気が付いた先輩が背中をさすり、優しく語りかける。

「盲目的に恋をするのは間違いではないと思う。でも、相手を思いやる心を忘れたらそれはもう恋ではないわ。」

「俺…撫子のこと…」

「ただ好きだったのよね?大丈夫。撫子にもそれはちゃんと伝わっている。ね?撫子。」

「うん。」

何度もうなずくと、最上くんは私を見つめ、その目に涙を溜めた。

「ごめん。撫子…俺…間違ってた…」

「うん。」

「叩いて、ごめん。悲しませて、ごめん。混乱させて、ごめん。」

「いいの。こんなの小田先輩の心に比べたら何てことない。」

「先輩の心…?」

「ひたむきな愛。見返りを求めない愛。純愛だよ。」

「純愛…」

そう言って先輩を最上くんが見つめた時に見せた先輩の笑みは多分、一生忘れない。
それは最上くんも同じだと思う。
抱き合う二人を見てそう思った。
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