理屈抜きの恋
撫子に部屋から出て行ってくれ、と言われ、素直に出たはいいけど、ものすごく気になる。
最上と小田のどちらが正しいのかなんてどうでもいい。
撫子がどういう結論を出すのか。
それが気になって仕方ない。
かっこつけて『撫子が幸せになれるなら身を引く…』的な発言をしたことがある手前、泣きつくようなことは出来ないけど、撫子が俺のそばから離れてしまいそうになるなんて、考えただけで頭がおかしくなりそうだ。
自室の前で人目も憚らず、ウロウロしているなんて、普通じゃない。
でも落ち着かないんだ。
「涼?お前、こんなところで何をしている?」
こういう時に限って会いたくない人に会うものだ。
普段はあまり社内にいないのに。
「会長…」
「部屋に入らないのか?」
入らないんじゃなく、入れないのだけど、そんなこと言ったら部屋を開けそうな気がしてならない。
「中で何か問題でも起きているのか?」
俺的に大問題だけど、個人的な問題に会社のトップを巻き込ませる訳にはいかない。
なんとか上手く誤魔化せないかな、と考えていると、部屋の扉が開いた。
扉を開けた撫子を室内に押し戻すような形で押し込み、俺もそれに続いて入る。
すれ違いざま、会長が怪訝そうな顔をしていたが、それは見なかったことにして、中にいる3人に目を移すと、3人が3人とも目を赤くしていた。
「何があったんだよ…?」
良く見れば撫子と最上の頬が赤くなっている。
撫子の頬に手を当てると少しだけ熱を帯びていた。
「おいっ!撫子に何をしたっ!」
どうして撫子が殴られる事態が起きなくてはならないのか。
瞬間的にカッとなり、最上か小田か、殴ったのはどっちだと言わんばかりに睨み付けると、目を逸らしたのは最上だった。
「最上!お前かっ!」
掴みかかろうとする俺の手を撫子が止めた。
そして必死に首を横に振る。
まるで大事なものを守るかのように。
その行動で、俺は撫子に振られてしまうのだと悟った。
もうダメなのだ、と。