理屈抜きの恋
「ハハハ!身内の不幸だって!涼。お前、傑作だな。この状況見て、どうしてそんな発想になるんだよ?」

「この状況ってなんだよ?」

そう尋ねると、会長はあれを見ろ、と言わんばかりにゆっくりと視線を動かした。
言葉で言えばいいのに、とイラついたけど、その視線の先を追うと、そこには最上と寄り添うようにして立っている小田の姿があった。

「は?」

「涼さん。私はどこにも行きませんよ。」

「え?」

「私が泣いた時、鈴木部長に怒られるのは涼さんですから。」

「それって…本当か?え?最上は?」

最上の方を向くと、初めて見た時のような眩しい笑顔で「完敗です」と言った。

「撫子の笑顔が好きだったのに、俺は撫子から笑顔を奪ったんです。それなのに副社長の存在一つで撫子の笑顔が見られました。勝てる気がしません。完敗です。」

お手上げというように両手を上げ、微笑んで見せた最上を見て、抱きしめたくなった。
隣に支えがあるようだから本当に抱きしめることはしなかったけど、こいつはもう大丈夫だ。
そう思った。
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