理屈抜きの恋
でも、一向に降ろす気配がなくて、せめてもの抵抗としてバタバタと暴れてみるけど、しっかり抱え直されてしまったら、それ以上身動きは取れなくなってしまった。

「タクシー乗り場まで人目につかないように気を付けるから、暴れるな。このまま一気に行く。靴をまた落としたら今度は捨てるからな。」

そんな風に暴言を吐きながらも、にやっと笑った顔は、今日一番の破壊力。

人目につかないように、なんて言いながらもホールに繋がる幅の広い階段を堂々と降りるのだってあり得ないのに、お姫様抱っこされて降りる階段はまるで童話の中のお姫様のようで、高鳴る鼓動は自制が効かない。

それはいつの間にか現実と非現実の区別さえつかなくさせていた。

外気に触れることで少し冷静な思考を取り戻したけど、タクシーに乗せられてもなお、自分の拍動が耳の中で鳴り響いて聞こえている。
こんなにドキドキするのは初めてだ。

なんとか落ち着かせようと胸に手を当てていると、本宮涼が私を後部座席の奥へと押し込んだ。

「あの?ここでもう大丈夫です。ありがとうございました。」

なぜか隣に座り込んでいる本宮涼にお礼を伝えた。
でも動かない。

「家はどこだ?」

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