理屈抜きの恋
「その足じゃ動けないだろ?だから、よいしょっと。」

「!!?」

身体が宙に浮く。
本宮涼との距離はさっきよりも近くなった。

「ちょっと?お、降ろしてっ!」

まさかのお姫様抱っこに動揺してバタバタと暴れると手に持っていた靴が落ちてしまった。

「あぁ、もう。暴れるから。」

心底めんどくさそうな口調だったけど、靴を落としたことは結果的に本宮涼から離れる絶好のチャンスだと思った。
だから降ろしてもらう気満々でいたのに、本宮涼は私を片手で抱えたまま、器用に靴を拾い、その靴を私の手に預けた。
筋力なんてなさそうな位、細身なのに、どこにそんな力があるのか、意外にも男性的な部分を見せられてまた少しドキっとしてしまう。
思わず顔を見てしまうと、ものすごく近い距離で目が合ってしまった。

「ちゃんと持っていろ。その靴、似合っていたから。」

「なに、言って…。ていうか、ほ、本当に大丈夫ですから。お願いですから降ろしてくださいっ。」

入り口に停まっているタクシーの所まで痛みを我慢していけば何とかなる。
お金は掛かってしまうけど、これ以上この人といると何かがおかしくなりそうだ。

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