理屈抜きの恋
俺はこれから祖父が守ってきた会社を、社員を守らなければいけない立場になる。
そこに必要なのは綺麗な女性ではないと思い直し、気持ちを引き締め彼女に対峙した。

『会長とはどういう関係だ?』

その質問に対し、彼女は答えなかった。
余程のことがあるのか、それとも口が堅いのか。
どっちだ、と様子を見てみると、どうやら後者が正しいようだった。
見ず知らずの人間に対し、余計なことを話そうとしないのだ。

その姿勢はすごく好印象だった。

そして、信念を曲げない強さ、物おじしない言い方、理屈っぽいけど、冷静に判断できる頭の良さ。
彼女を秘書に迎えるのは祖父の言いなりになるようで癪だけど、それはそれで面白い、と思った。

そして最後に言われた『あなたが必要です』に心が動き、それまでにも増して俺の頭の中は彼女でいっぱいになった。

その後、ホテルの床に座り込んでいる彼女にまた会った時は驚いたけど、それさえも運命だと思うなんて、女なんて必要ないと思っていた俺には考えられないことだった。
それほどまでに彼女は短時間で俺の心を占領した。

そして現在。
急な人事異動で納得がいかない様子の彼女を秘書として迎え、同じ部屋で過ごすようになったのだが、一緒に仕事をしてみて驚いた。
< 61 / 213 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop