理屈抜きの恋
今日も営業部の鈴木部長が誘いにやって来ている。

「今週の日曜日に統括部長のご自宅で麻雀大会をやるんだ。久しぶりに行かないかい?」

「今週の日曜日ですね。いいですよ。」

「神野くんが来てくれると華やぐし、統括部長のお気に入りだからね。喜ぶよ。」

「本宮副社長は麻雀、出来ますか?」

ほら。
やはり話しを振ってくれる。

「俺は出来ないよ。」

「は~。やっぱりお坊ちゃんは違うね。他の遊びをするんだろうな。」

鈴木部長のバカにしたような言い方に多少なりともムッとする。
なぜか俺のことを認めてくれていないからその反応は当然なんだけど、麻雀が出来ないだけでバカにされるなんて、出来ないといけないのかよ、と言いたくなる。
俺は負けず嫌いなんだ。
イライラするのを楽しむかのような態度もむかつく。

一言物申してやろうと口を開いた時、彼女が先に言葉を発した。

「鈴木部長だって出来なかったじゃないですか。誰が教えてあげたんでしたっけね~?」

ピリッとした空気が広がる。
仮にも目上の人に言う事ではない。
怒るかな、と恐る恐る部長の方を見ると、デレっとした笑みに変わった。

「かぁ~。神野くんには敵いませんな。痛いところを突いてくる。将棋の指し方と同じだ。」
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