理屈抜きの恋
全種類食べてみたくて、一斉に動き出した人の列に並ぼうとしたら、細井さんに腕を掴まれた。

食べることがこの世で一番好き、と言う細井さんが食事に向かわず、引き留めるなんて。
急用かと思い、細井さんの方を見ると、細井さんの視線は一人の男性を捉えていた。

「あの人、撫子さんの同期の方ですよね?」

あの人、と細井さんが指差すその先にいたのは、女性に囲まれて一際異彩を放つ一人の男性。

背が高く、細身の体型は、スーツがよく似合い、まるでモデルのよう。
少し茶色い短めの髪に、くっきり二重の瞳、厚くも薄くもない唇の端は自然と上がっていて、そこから覗く白い歯は羨ましい位綺麗に揃っている。

「そうだけど、どうして?」

「あの人に彼女がいるか知っていますか?」

「え?細井さんのタイプなの?」

確か細井さんは太った人がタイプだと言っていたはずだ。美味しそうに食べるから、と。
それなのに彼?どう見ても正反対なのに。

「あれだけのイケメンですよ。タイプじゃなくても気になります。」

素直に言い切った細井さんの言葉に、社内の女性陣が牽制し合っている中で彼をゲットできるのはこういうガッツのある子かもしれない、と思った。
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