理屈抜きの恋
「あ!こっちに来ますよ!」

一気にテンションが上がった細井さんは、私の肩を何度も叩き、濃い目に塗ってあるチークとは関係ないほど、頬を赤く上気させた。
近づいてくるだけで女子を赤面させる威力のある男性ってすごい。

「撫子、来ていたなら声掛けてくれよ。」

「最上くん。」

最上くんは最上爽という同期の中で唯一の男性。

私の入社時は、募集人数が例年になく少なくて、同期は真美ちゃんと最上くんの二人だけしかいない。

何十倍もの倍率を潜り抜けた優秀者たち、などと嫌味に近い形で揶揄されたことが入社当初にあったけど、その嫌味がなくなったのは一重に最上くんが優秀だったからだと私と真美ちゃんは思っている。
実際、柔軟な発想と協調性の高さから仕事でメキメキと頭角を表し、今から将来を期待されている最上くんは同期の星だ。

そこにこの容姿が加われば人気があるのは必然的で、最上くんと同期だから、というだけの理由で私に近づいてくる女性社員が一時期後を絶たなかった。

「撫子さん、紹介して下さいよ。」

積極的な細井さんが、私の服を引っ張り、私だけに聞こえるように小声で話しかけてくる。
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