理屈抜きの恋
「覚えていたことは褒めてやるが、ここで制した、ということは俺の事が嫌いだと言っているのか?」

「嫌いとか好きとかそういう問題ではありません。今は仕事中です。節度ある行動をお願いします。」

「フンッ。堅苦しいにも程がある。でも、分かったよ。プライベートな時にその唇はもらうから。」

「え?」

「この意味、ちゃんと考えておけよ。」

意味って…
それって私を好きっていう意味?
いやいや、からかっているだけだって。
真に受けたらバカを見る。

でも私の方を横目で見てから柔らかく微笑んだその表情に胸がまたドキドキし始めた。

「ふうぅぅぅ。」

一度、深く息を吐き出して気持ちを落ち着かせてから、運転手さんが開けてくれたドアから降りる。
なんだったんだ、今の時間は。
経験値が足りな過ぎて考えるものも考えられない。
頭がすごく疲れている。
鼓動も呼吸も苦しくて、身体全体がだるい。
社用車に手を付いてもう一度深呼吸をする。

「おい。なにしているんだ?行くぞ。」
< 79 / 213 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop