【長編】戦(イクサ)小早川秀秋篇
「それはわしが余計な口出しをし
ていたと言いたいのか」
「古くから伝わる孫子兵法には君
命に受けざる所ありとの教えがあ
ります。その場の臨機応変の対応
こそ大事。ここから海の向こうで
何が起きているか見えるでしょう
か」
 もっともな言い分に面白くない
秀吉は矛先を変え、蔚山城の戦い
で先鋒でありながら、もたつき、
また撤退する明・朝鮮連合軍を追
撃しなかった蜂須賀家政、黒田長
政を叱責した。そして軍目付の早
川長政、竹中隆重、毛利高政の所
領を没収する処罰を下した。
 このことに秀秋は怒りを爆発さ
せた。
「皆に落ち度はない。朝鮮では孫
子兵法にある天の時、地の利、人
の和がなく、とと様が天下を取っ
た時とはまるで違う。とと様は勝
機のない戦をもて遊んでいるだけ
ではないか。とと様こそ兵法を学
ばれよ」
 秀秋の怒りに諸大名は騒然と
なった。
 とっさに石田三成が秀秋を大広
間から連れ出した。
 その場にいた家康はいいものが
見れたとニヤリとした。秀秋の兵
法にかなった思考力と元養父とは
いえ権力にこびない態度に興味が
わいた。
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