体から堕ちる恋――それは、愛か否か、
拓未は綾香から荷物を受け取ると、車の助手席のドアを開けた。
「有難う」と言って綾香が車に乗り込んだ後、拓未も後ろの席に荷物を入れて運転席に座った。
「飯食った? 最近、近所にうまいイタ飯の店が出来たから、一応予約したけど」

昼時に迎えを頼まれたら、一緒にランチを食べるものだと期待するのは当然だ。
けれど綾香は「ごめーん、悪いけどお母さんと家でお昼たべることになってるの」と、大して悪くもなさそうに断った。
拓未は「そっかあ」と残念そうな声を出したが、それでもすぐに「じゃ、今度ね」と、綾香に笑いかけ、車をスタートさせた。
 
 岡山駅から綾香の家までは車で30分ほどかかる。そして綾香と拓未の家は歩いて15分くらいしか離れていない。

「4日間、こっちにいるだろ?」
「うん」
「俺んとこも休みだからさ、海でも行こうよ」

岡山にはきれいなビーチがいくつもあり、小さな島に渡って泳ぐこともできる。泳ぐのが特に好きなわけではないが、拓未は海が好きだ。
波の音も、潮風もひいては寄せる波の様子も、しゃらしゃらした砂の感触も、海そのものは大好きなのだ。
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