体から堕ちる恋――それは、愛か否か、
「水着持ってきてないもん」
「買ってやるよ。ビキニ限定で」
「じゃあ、いらな~い」

イニシアチブはいつだって自分にあることを、綾香は知っている。拓未はいつだって綾香の言いなりで、とにかく自分と一緒に過ごせればいいのだ。そのためには何でもしてくれる。そんな風にたかをくくっているから綾香は拓未に対していつもわがままになる。

「ウソだよ。なんでもいいよ。そうだ、これから買いに行こう」
「いい。日に焼けるのやだもん」

そう言って、わざとらしく顔をぷいと横に向けた綾香の肌は、夏だというのに全く日焼けしていない。
駅から出てきた綾香の姿が目を引いたのは、季節に似合わぬ白い肌をしていたせいなのか。
赤信号で車を止めた拓未は、改めて半袖のワンピースの袖から伸びた綾香の腕に目をやった。
< 115 / 324 >

この作品をシェア

pagetop