体から堕ちる恋――それは、愛か否か、
フェラリーのベルリネッタ。正式名称は『フェラーリF12 ベルリネッタ』。4千万近くするフェラーリの中でも超高級車だ。

「まじかよ。凄いな。言っておくけど、もし車に何かあっても会社の経費で落とせないからな」

 会社の財務を担っている優は釘をさす。

「わかってるよ」
「で、俺にも運転させろよ」

フェラーリのF12 ベルリネッタなんてそうそう運転できるものではない。

「やだよ。なんかあったら怖いもん」
「じゃ、電車で帰れよ」
「えー。だってさあ、父さん慌てて飛び出して、ゴルフバッグとかシューズとか、荷物を全部おいてっちゃたんだよ」

父はそそっかしい。いろんなものをいろんな場所に忘れてくるし、思い違いもよく発生する。

「優君が父さんの車を借りたせいでもあるんだから、早く来てよ」

御殿場なら東京に戻る途中だ。迎えに行くこと自体はどうってことないが、生美は優に彼女がいることを知っている。別荘から美弥を乗せていくというのはいかがなものかと、優はしばし逡巡した。



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