体から堕ちる恋――それは、愛か否か、
「どうした?」
「父さんからきいたけど、今別荘にいて、今日帰るんでしょ? そこ、何時ごろ出る?」

なんでそんなことお前に関係あるんだよ、と思いながら、「もうすぐ出ようと思ってる」と答えた。
白くて丸い壁時計は11時になるところだった。
途中でランチを食べて帰っても、夕方にはつくだろうという計算だ。

「よかった! 僕さ、昨日から父さんのゴルフに付き合って御殿場に来てたんだけどさ、父さんたら、人に会う約束を忘れてたとか言って、急に僕を置いて帰っちゃったんだよ。ひどくない? 『お前の車、借りていくぞ。優君が別荘にいるから送ってもらいなさい』って言って」
「まさか俺に御殿場まで迎えに来いとか言わないよな」
「言うよ。そのために電話したんだから。だってさ、優君が父さんの車を乗ってっちゃったから僕の車で父さんを御殿場に連れてくるはめになったんだよ。でさ、あげくに僕を置いて人の車で先に帰っちゃって、かすりでもしたら大変だよ」
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