体から堕ちる恋――それは、愛か否か、
9月の後半まで暑さが粘り、10月に入っても秋らしさは全く感じなかったのに、すとんと冷たい空気が舞い降りてきた。
あと1回の勉強会を残し、夏の別荘で過ごした日を最後に優からの連絡が途絶えた。
それから思ってもみなかったほど寂しくなった8月の終わり、少し腑抜けた状態になったころ、突然綾香が美弥の前に現れた。

仕事を終え、オフィスビルを出たところですぐに「柏木さん」と声をかけられた。ビルの1階に入っているカフェで美弥が出てくるのを待ち受けていたらしい。
美弥がその声に振り向くと、「柏木美弥さん、ですよね?」と念を押された。

肩までの髪が、もう夜だというのにまるでセットしたてのようにきれいにくるりとカールしていた。唇はピンクのルージュで艶やかに潤っている。ふんわりとした白いブラウスに花柄のフレアスカートが、彼女の清純そうな雰囲気によく似合っている。
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