体から堕ちる恋――それは、愛か否か、
「そうですけど――」

美弥は見知らぬ若い女性に呼び止められて戸惑った。
「ですよね?」と確認してくるということは、彼女も美弥と会うのは初めてだということだ。
自分をわざわざ待ち伏せしていた初対面の女性をまじまじ見ると、「すみません、突然。私、藤沢綾香と言います」と、彼女は笑みを投げかけてきた。

藤沢と名乗られてもその名前に覚えのない美弥はますます混乱し、「藤沢さん?」と聞き返すことしかできなかった。
しかしすぐに「沖田優さんと付き合ってます」とその存在を種明かしされて、美弥は「あっ」と心の中で声を上げた。

綾香の顔から笑みはすっかり失せていて、美弥が何も言わないうちに要件を切り出した。
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