囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~


及川の言葉に、そういえばと同期で集まった時、玲奈が言っていたことを思い出す。

小田くんの先輩のアドレス、及川経由で頼んだハズなのにって。

そうか……すっかり忘れてたけど、あのアドレスは及川がまだ持ってるままなのか、とドキドキしながらも、どこか冷静を保つ部分で思う。

私が何かしらその先輩に連絡しなければ、小田くんの立場が悪くなるんじゃないかとか、そういうことは思ったけれど……言わなかった。
ただ、及川の言葉を待っていた。

私の両手をそれぞれ握った及川が、視線を合わせてニッと笑みを浮かべる。

「一緒にいたい理由、一個しか浮かばないけど……でも、本気だって思う」

いつかファミレスでした事を思い出す。

『じゃあ深月は何個理由言えたら本気の恋だと思う?』
『20個は確かに妥当かもね』

そんな会話をした事を。

「俺、深月が好きだから一緒にいたい。どんなに考えても、それ以外思い浮かばなかった」

真面目にそう言いきってから「どう思う?」なんて聞いてくる及川に、真剣に聞けばいいのか、ふざければいいのか分からなくて、変な笑い顔になってしまう。

私だって及川と一緒にいたい理由はひとつだ。
好きだからって理由が大きすぎて、他の理由なんて見つけられなかった。




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