囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~


例え、両思いになったところで。及川が本気で好きだって言ってくれたところで。
だからと言って、及川の恋愛観がすっかり変わるとも思えない。

だって人間そう簡単に変わるわけじゃないし。

だからってわけでもないけれど。
いや、だからってわけかもしれないけど。

最後までしちゃったら飽きられるんじゃないかっていう不安みたいな思いは、付き合い始めてからもずっと私の中から消える事はなかった。

けれど。付き合い出して二週間。
一度関係を持ってしまっている分、その辺の進みは早そうだし……そろそろ逃げてばかりもいられないのかもしれない、と思ってはいる。

思ってはいるし、及川がそういう雰囲気に持って行きたがってるのもなんとなく分かってる。
分かっているんだけど……。

もうほとんど諦めていた恋人の座に収まれた途端、踏み出すのが怖くなってしまうのだから、本当に人間って欲深いなとため息しか出ない。

そんなため息を隣で聞いていた及川が、不意に私の耳に口を寄せる。

「こっそり抜けちゃおうか」

耳に囁きかける及川を見ると、ニヤッと悪い笑みを浮かべていて……「そういうわけにもいかないでしょ」と眉をしかめた。

今日は、及川と付き合い出して二回目の土曜日。つまり七月第三土曜日。
休日ではあるものの、半強制的に市の体育館に集められていた。

というのも、信用金庫が執り行う卓球大会があるからで、そこに花岡さんが出場するからだ。

卓球部を持つ信用金庫は県内に八つ。
一年に一度、トーナメントで試合が組まれるらしく、今日はどうやらその準決勝らしい。


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