囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~


「コーヒーくらい自分で入れてください」
「華の入れたコーヒーが飲みたいから」
「もうこの時間だし、インスタントだから誰が入れても一緒でしょ」

朝一で、これから来客予定があるっていうならドリップを落としたりもするけれど、とっくに閉店している16時50分にわざわざ職員のためにドリップコーヒーなんて使わない。
そもそも、ドリップだって誰が入れても一緒だし。

洗い物を済ませてぴっぴと手についた水を弾いていると、隣にいた大崎くんが少し疑問そうに私と及川を見てから「あ、じゃあ自分が入れますっ」と名乗り出た。

そんな大崎くんに、及川は「いや、いいよ」と微笑む。

「なんだかんだで華が入れてくれるから」

……そう。及川が私を名前で呼ぶ時に必ず発生している条件とは、大崎くんがいるって事。
もっと言えば、私と大崎くん、そして及川が三人になるって事が条件だった。

その理由は……多分、大崎くんが一ヶ月ほど前の決起集会で酔った時、好きかもしれないだとか発言したからなんだろうけど。
それにしたって、とため息が落ちる。

「いいよ、大崎くん。同期のよしみで私が入れるから」

〝同期〟という部分を強調して言ってはみたものの……。

「……はい。じゃあお願いします」

そう答える大崎くんの目は疑問を残したままだ。

「どうせお湯沸かすし、他にも飲みたい人いるか聞いてきてくれる? 営業ももうみんな帰ってきてるだろうし」
「分かりましたっ」


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