囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~


及川だけが特別なんじゃないと、どうにか伝わらないかなと思いながらした提案のせいで、入れる事となったコーヒー九人分。

それを大崎くんと一緒に配ってからやれやれとデスクに戻ると、それに気付いた手塚先輩がキャスター椅子に座ったまま寄ってくる。

「どうしたの? コーヒーなんか配っちゃって」
「あーはい。及川がコーヒー入れてって言ってきたんですけど、お湯がなくて。どうせ沸かすならみんなに聞いてみようかなと思って」
「ああ、そういう事。たまに営業がケーキとか買ってきてくれるしお返しになっていいかもね」

営業担当がケーキを買ってきたりするのは、うちの取引先に三店舗ケーキ屋があるからで、それも広く言えば付き合いのうちだ。
歓送迎会で温泉街の旅館を使うのと似たような事。

そのおかげで、クリスマスケーキは必ず注文しなくちゃだから、年末は二千円強の出費が余儀なくされるわけなんだけど……まぁ、普通においしいし誰かから強く文句が出た事はない。

と、いうよりももう暗黙の了解すぎて今更誰も文句なんて言い出せる雰囲気ではない。

私なんかは実家だからみんなで食べられもするけど、及川みたいにひとり暮らしでしかも甘いモノがそこまで好きじゃないと、毎年クリスマスケーキの消費には苦労するらしく。

一年目で懲りたからと、翌年からは当たり前のように私に渡してくるから、うちだってホールふたつは結構大変なんだからねと文句を言うのももう恒例行事だ。

「あ、そうだ。今週金曜日の送迎会、香白に決まったって。さっき支店長が話してるの聞いちゃった」

嬉しそうに言う手塚先輩に「あ、そうなんですか、よかったですね」と答えると、コーヒーを配り終えた大崎くんが椅子を引きながら「あ、それ、泊まりなんですよね?」と聞く。




< 149 / 194 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop