囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~


団欒できるようにか、たくさん置かれている籐でできた椅子と、ガラスのテーブル。

その一角にふたり並んでいる姿を見つけて、なんとなく踵を返そうとしたのに。
そうした途端、止めるようにぐいっと腕を掴まれた。

驚くと、私の腕を掴んだ手塚先輩が口元に人差し指を立てていて……。
眉をしかめて「どうしたんですか」と小声で聞いたけれど、それには答えずに手塚先輩がぐいぐいと腕を引っ張って歩く。

小さく抵抗をしながらも結局引っ張られ連れて行かれた先は、及川と花岡さんが話す傍にある壁の影で、ふたりの会話が聞こえる距離だった。

こんなのは盗み聞きみたいで嫌だと抗議すると、手塚先輩は片眉を上げて言う。

「こんなところで聞かれて困るような事話さないだろうし平気よ。花岡さんの、目に見えたアピールも見るの最後だし思い出に」
「意味が分かりませんし、結局、手塚先輩が聞きたいだけじゃな……」

と言いかけた時、花岡さんの声が聞こえてきて、反射的にピタリと黙る。

「深月さんから聞いたよ。及川くんと深月さん、そういう仲だって」

バッと、隣から勢いよく向けられた視線から、同じ速度で目を逸らす。
気持ち的にはダラダラと尋常じゃないほどの汗が流れているような、そんな感じだった。

花岡さんが言っているだけだし、嘘だって否定する事もできるけど……事実なだけに何も言えずにただ汗を流していると。
「そんな焦らなくてもいいわよ。なんとなく怪しいなって思ってたし」と小声で言われた。

「えっ」と声をもらして視線を戻すと、はぁ、とため息を落としながら手塚先輩が言う。


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