囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~


「元から仲が良すぎてたし、遅かれ早かれそうなるんじゃないかとは思ってたのよね。
及川さんの女遊びの噂があったから、真面目な深月には合わないのかなとも思ったけど……なんだ、結局まとまったの」
「……まぁ、そんな感じです」

曖昧に逃げた回答をした私に、「後で聞くからね」ときつい眼差しでビシッと言った手塚先輩が、及川と花岡さんに視線を戻す。

後ろ姿しか見えないから、及川がどんな表情しているのかは見えない。
でも、隣に座る花岡さんの、笑みを浮かべた横顔は見る事ができた。

旅館が決めているチェックアウトの時間までは、まだまだ余裕があるからか、受付を通る人はいなくて、静かだった。

「でも深月さんは及川くんの軽いところが嫌で限界みたいよ? 及川くんのことを信じられなくてツラいって、大崎くんに相談してたもの。
大崎くんが必死に励ましてて、なんだかお似合いで微笑ましかったわ」

「嘘でしょ?」と隣からボソッと聞かれて頷く。
よくもあんなに堂々と嘘がつけるものだな……と半ば呆れながら眺める先で、花岡さんが「やだ、そんな顔しないで」と、続ける。

そんな顔がどんな顔だかわからないけど……怒るとも思えないから、しかめっ面でもしたのだろうか。

「だって深月さん、真面目だもん。最初から及川くんとは合わなかったってだけでしょ。
その点私なら煩く言わないし、価値観も合うと思うんだけどなぁ。もちろん、深月さんとも別れろなんて言うつもりないしね」


< 182 / 194 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop