囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~


「俺のせいで深月さんが悪く言われるのは嫌です。ちゃんと教えてもらってるのにミスしてるのは俺の責任であって、深月さんのせいじゃありません! だから、深月さんの事を悪く言うのはやめてください」
「大崎くん、もういいから。……花岡さんも多分、もう怒ってないよ」

そう言いながらチラリと見ると、花岡さんは及川の手前、嫌な顔をするわけにもいかず「うん。もういいよ」とあっさりと許して笑顔を浮かべる。

この変わり様はどうなんだろうとも思うけれど、これもいつもの事だから特に気にするでもなく受け入れる。

私の右隣りの椅子を引いて座った及川も、なんとなく流れは分かったようで「お疲れー」とコソッと笑うから、苦笑いだけで答えた。

「あ、及川くん、お茶いれるね」
「あ、花岡さん、そういうのは大崎くんがやりますから……」
「立ったついでだから」

食堂でお茶を入れるのは新入職員の役目みたいなところがあるから言ったけど……。
花岡さんが乗り気なら放っておいた方がいいかと、息をついてやっとお弁当を開けた。

ここまでくるまでが長かった……あとお昼休み何分残ってるだろう。

「大崎くんも食べよ。あと三十分しかないから急がないと」

やけに静かな横顔に言うと、大崎くんは「あ、はいっ」と返事をした後、しょぼんとした顔をする。



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