囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~


「深月さんの事悪く言うのはやめてくださいっ!」

大きな声が食堂に響いて、その後、しーんとした沈黙が走る。

ぐっとそれぞれの拳を握ったまま立っている大崎くんと、その視線の先にいる、驚いた顔を浮かべる花岡さんに……マズイ、と焦る私。

花岡さんも花岡さんだけど、それでも先輩だし怒鳴ったりするのは絶対にマズい。
だから、私も立ち上がって花岡さんに謝ろうとしていると。

食堂のドアがキ……ッと音を立てて開いて、続いて、場にそぐわない明るい声が聞こえてきた。

「なんだよ、喧嘩? 大崎の声、廊下まで聞こえてたけど」

コンビニ袋片手に笑いながら言う及川に、思わず心の中で、よしっ!と、ガッツポーズする。
多分、今の状況を収めるには一番の適任だ。

花岡さんは確かに預金課全体に対して態度が悪くて嫌味を言うけれど、私に対してはとくにひどい。

それがなんでかって言えば、私が及川と仲がいいからで。
つまり花岡さんは、及川を気に入っているっていう事で。

特に気持ちを隠そうとは思わないのか、花岡さんの態度は如実だから、花岡さんの及川への片想いは周知の事実に近かった。

そんな及川の前ではもう、さすがに憎まれ口は叩けないハズだとホッと胸を撫で下ろしていると。
まだ納得いかない様子で大崎くんが言う。

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