囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~
「あれ、友達?」
「あー、はい」
まさか元彼です、とも言えずに曖昧に笑っていると。
そういうところだけ勘の鋭い手塚先輩は「なんか怪しい」とニヤニヤ笑う。
「怪しくもなんともないですよ。暇なら大崎くんに諸届関係教えてもらっていいですか」
「ごめん。今超忙しい。猫の手も借りたい」
ぱっと切り替えて仕事に戻った手塚先輩の背中を睨んでいると、聡史は記入が終わったのか、両替伝票と両替するお金を窓口係に渡す。
十枚くらいの枚数だったら、窓口にある機械で処理してしまったりもするけれど、たいていは後ろに置いてある出納っていう機械で処理する。
窓口係の手が空いていれば、自分で後ろに下がって処理するし、他の処理で手がふさがっていれば私たちみたいな後方事務に頼む事もある。
今は他のお客様もいるから、聡史の両替は後方事務がする事になるのだけど……。
窓口係から両替処理を頼まれた手塚先輩は、出納で両替をした後、それを私のところに持ってきた。
「はい。再鑑したら深月から返しちゃっていいよ。今忙しくないし、ちょっとならそのまま話してても大丈夫だから」
50枚ずつビニールできっちりまとめられた硬貨が二本乗ったカルトンをデスクの上に置きながら、手塚先輩が言う。
知り合いなり友達なりが来店した場合、店頭が混み合っていなければこういう事はよくある。
私に限らず、手塚先輩だったり花岡さんだったり、カウンター越しに少し話したりはするから普通だ。
だからこそ、いえ大丈夫です、なんて断る方が不自然で余計に怪しまれそうだからと、別にもう話す事もないんだけど……と思いながらも立ちあがった。
カルトンに乗っている10円玉50枚と100円玉50枚を、言われた通り再鑑して、カウンターの隅に立って聡史を呼んだ。