囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~


「確認してね」
「ああ、はい。確かに」

硬貨を確認してから、聡史がぷっと笑う。

「店でもたまに見るけどさ、これ見るたび、ラムネみたいだなぁって思う。華も思わなかった?」
「んー、思ったかもしれないけど、なんかもう見慣れすぎちゃってこれにしか見えないかも」
「まぁ、そうだよな。銀行員は金は商品だもんな。逆に金だって意識で見てたら犯罪とか起こしそう」

聡史が、硬貨二本を鞄に入れながら苦笑いをこぼすから、何かと思って見ていると。
カウンターのこちら側、つまり職員が仕事をしている側をチラッと見た後、小さな声で言われる。

「なんか、すごい視線感じるんだけど」
「あー……ショートカットの人でしょ? なんかこういうの疑るのが好きな人なだけだから大丈夫」

まったく手塚先輩は、とため息をつきながら言うと「え、違う違う。男」と言われて。

「男?」と、誰だろうと眉を寄せながら振り向くと……確かにこちらを凝視する男の姿があった。
大崎くんだ。

「すごい気にしてるけど……もしかして付き合ってるとかそういう事?」
「え。違うよ。あの子、私よりみっつも年下だし。今私がコーチャーしてる新入社員」
「え、三年目でもうコーチャーとかやってんの?」
「うん。試しにって感じだけどね。だからそろそろ戻る。何やればいいのか分からなくて困ってるのかもしれないし」
「ああ、そうだな。じゃあ仕事頑張って」
「うん。聡史もね」

そう挨拶して、一度は背中を向けた聡史が、何かを思い出したようにこちらを向いて、胸ポケットから名刺を取り出した。
そしてそれを差し出して「電化製品買う時には使ってよ」と笑う。


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