囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~


にやっとした嫌な笑みを浮かべる花岡さんに「そんなわけないじゃないですか」と軽く笑って答える。

有線もかかっていない、シンとしたフロアに、私と花岡さんの会話だけがよく聞こえる。
それはきっと、他の職員が黙って耳を傾けているからだろうって考えると本当に嫌になった。

大崎くんはあんなだから、場を踏まえない発言をしてしまってもまぁ仕方ないにしても。
花岡さんはわざとそれを狙ってなんだから、本当に性格悪いなぁ……と思いながら、あくまでも笑顔でデスクを水拭きする。

「私ね、星座占いとか好きなんだけど、大崎くんって魚座なのよ。で、深月さん、牡羊座でしょう?」

なんでそんな事把握されてるんだろうとギョッとしてから、その理由が思い当たってああそうかと思う。

うちの会社には、有給休暇として〝メモリアル休暇〟というものがある。言葉を変えれば〝誕生日休暇〟。

つまり、誕生日のある月に強制的に有給を取るシステムになっている。
恐らく、そうでもしておかないと有給がちっとも取れない人が続出してしまうからだろう。

特に管理職なんかは、強制休暇である、メモリアル休暇と長期休暇以外の有給は消化できていないのが現状だ。

まぁ、そんな感じで、メモリアル休暇は確実にとらなくちゃいけない、みたいになっているため、食堂にかけてあるカレンダーにはそれぞれの誕生日に印がつけられている。

意識して忘れないようにという意味なんだろうけれど、赤字でかなり大きく。
それを見れば、誰がどの星座かなんて事は、少し星座に詳しい人ならすぐに分かるのかもしれない。

私は自分の星座は分かっていても、他はかに座が夏だとか、それくらいしか分からないけれど。



< 62 / 194 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop