囚われロマンス~ツンデレ同期は一途な愛を隠せない~


「かもね」

いつか、及川をズルいって言ったのは、こういう部分も含めてだ。

私の気持ちをきっと分かってるくせに、分かってて遮ったくせに、こういう事を平気で聞いてきて……そして、私の反応を探ってる。

気持ちなんてないくせに、なんでこういう事をするのかが分からない。

私が好きだなんて言い出したら困るくせに。
だから、あの告白なんて何もなかったみたいにしてるくせに……なのに、なんで。

溢れそうになる疑問を胸の奥に押し込んだところで立ち止まる。

これ以上は危険だ。
漠然とだけどそう感じ、歩いている道の先を指さした。

「ここ、真っ直ぐ行って突き当りを右に曲がれば駅だから」

もうひとりで行けるハズだ。
そう思って「じゃあね」と背中を向けようとした時。

及川が私の肩を掴んだ。

驚いて見上げると、真剣な瞳が私を見ていて……戸惑う。

「『かもね』ってなに? それ、本気で言ってんの?」

「なにが?」と、なにもわからないふりをして返した言葉が、震えている。
及川はそれに気づかなかったのか、眼差しの強さをそのままに聞く。

「俺が抱きたいって言ったら、大人しく抱かせてくれんの?」
「な、にそれ……。バカじゃないの? 及川酔ってるんだよ、早く帰……」
「俺が望めば抱かせてくれんの?」

暗い空の下。昼から夜に変わった空気は生暖かくまとわりつく。

住宅街、シンとした中で、及川の真剣な瞳が私を捕えていて……なぜだか泣きそうになった。



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