その唇に魔法をかけて、
「変だと思ったんだよね、美貴ってさ……品が良すぎるっていうか、育ちがいいっていうか、なんとなくここにいる人たちと雰囲気が違うし」

「彩乃……ちゃん?」

 歩み寄る彩乃は鋭く美貴を捉えて睨んでいるようにも見える。そんな彼女の表情にチクリとしたものが胸に刺さる。

「それに今日の中休みに花城さんと一緒にいたでしょ?」

(もしかして、見られてた……?)

 問い詰めるような彩乃の口調に言葉が出ない。中休みに彩乃を探しに行ったつもりだったが、変に誤解を招いてしまったようだ。

「えっと……」

 そしてその戸惑いがさらに彩乃の不信感を煽ってしまった。彩乃の眉がみるみるうちに歪んでいく。

「グランドシャルムって東京にあるものすごい高級ホテルだよね? 美貴ってそこのお嬢様なの?」

「あ、彩乃ちゃん、あのね――」

 話を聞いてもらいたくて口を開いたが、言い訳じみた言葉しか思い浮かばない。

「さっき、かえでさんが言ってたのがたまたま聞こえちゃったの」

 嘘をつくのは苦手だった。その場を取り繕う言葉でもどうしても顔に出てしまうのだ。だったら正直に話したほうがいい。そう考えてゴクリと喉を鳴らした。

「そうだよ、かえでさんの言ってたのは本当。それに今日の中休みにも花城さんと一緒にいた」

 そう言うと、彩乃は一瞬目を開いて傷ついたような顔をした。今まで見たこともない表情に胸が深く抉られる。

「やっぱりね、美貴が響兄ちゃんに媚びてるって仲居中で噂になってるよ」

「え……?」
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