その唇に魔法をかけて、
「明日明後日は休みだろ? ゆっくり休め、な? 本当は……気分転換にどこか連れて行ってやりたいところなんだが、あいにく仕事の折り合いがつかなくてさ」

「お気持ちだけで十分ですよ、あ、真山夫妻がお帰りみたいです」

 二人で話していると、奥からかえでに案内されながら真山夫妻が笑顔で歩いてくるのが見えた。表情からして黎明館で過ごした時間を存分に楽しんだように見える。

「花城さん、私は大丈夫ですから……真山夫妻にご挨拶を」

「あぁ、わかった」

 すると花城の表情が満面の笑顔に切り替わり、真山夫妻と手話で会話をし始めた。

(あぁいう特技、私も欲しいな……)

(手話……か)

 言葉でコミュニケーションの取れない人と会話ができたらどんなにいいだろう。美貴はそんなことを考えながら花城に憧れの眼差しを向けた。
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