大きな河の流れるまちで〜番外編 虎太郎の逆襲〜
翌日。
虎太郎とは、大学のカフェテリアで、待ち合わせした。もう、大学は春休みに入っていたが、レポートが終わらなかったからだ。
やっと、提出にこぎつける。同じクラスの仲良しの美緒ちゃんと一緒になった。美緒ちゃんは東北にある実家が、中規模の産婦人科をしていて、産婦人科医になるため、この大学の医学部に入学している。元気で、遠慮がなく、楽天的な女の子だ。多分身長は160センチはないと思うけど、姿勢が良く、可愛い系なので、結構、男子に人気がある。
「あやめ、珍しくギリギリだったの?」と、ニヤニヤするので、
「いつも提出期限ギリギリの美緒には言われたくないいですけど」とすました顔で答える。と、美緒ちゃんは大きな笑顔で、
「気にしない、気にしない。これで、やっと、春休みだねー。」と、嬉しそうだ。私も笑顔を返す。
「あやめ、これから、お茶しない?」と誘われたが、
「ごめん、今日はこれから、約束があるの。」と断ると、
「珍しい、あやめに予定があるなんて。いっつも、家と、学校の往復しかしてないのに。」と言うので、
「私にだって、約束する相手ぐらいいます。」とにっこりして、カフェテリアへの角を曲がると、
「どこ行くの?」と聞かれ、
「か、カフェテリアで、待ち合わせてるの。」と顔が赤くなってしまう。
「ふーーん、私も行く。」と、私の手を握る。私は立ち止まり、
「何で?!」とさらに、顔が赤くなってしまうのが自分でわかる。
「だーって、面白そうだもん。美人なのに、男の子の誘いにはいっさい乗らないあやめが、顔を赤らめて待ち合わせする相手。」とにっこり、ぐんぐん、私の手を引いて、カフェテリアに向かう。
ちょっと待って、私はまだ誰にも虎太郎の事を話していない。

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