恋した責任、取ってください。
大地さんには恋をしたくない理由がある。
でも私は、それを話してもらえる身分じゃない。
……辛いけど、それが全てだ。
それに、あれからしばらくして、今は夏期休暇で実家に帰っている弥生がぽつりと言った『告白って、なんか自己満足の延長みたいだよね』という言葉が妙に印象的で、そうだと納得した部分もあり、色々考えさせられたのだった。
それでも仕事はきっちりこなそう。
恵麻さんが少しでも安心できるように。
「それでは、私は生徒の皆さんを迎えに行ってきます。至らないことだらけだと思いますが、今日は私に胸を貸してください!」
ふん!と煩悩を振り払い、気合を入れて、もうそろそろ集まりはじめるだろう教室の生徒さんたちを迎えに、体育館をあとにする。
今日の会場は、ブルスタ選手がいつも練習で使っている自社ビル地下の体育館だ。
一応、外に『夏休みバスケット教室へご参加の皆様はこちら 受付ロビー右手のエレベーターで地下体育館までお越しください』と、立て看板と進行方向を記した矢印で案内を出してはいるけど、その隣で出迎えてくれる人がいるのといないのとでは、きっと印象が違うと思う。
受付業務も兼ね、ゲストカードと参加者の名前を確認するためのチェックシート、今日の教室の内容が大まかに書かれたプリントを抱えて、ソワソワしながら生徒さんを待ちわびる。
と。
「--わっ!」
「少しなら大丈夫だろうなんて油断してたら、あっという間に熱中症だよ? それ、ソウのキャップだけど、ないよりマシだし被ってて」
急に頭に何かを被せられたと思ったら、なんとなく不機嫌そうな声がその上から降ってきた。
ブカブカのキャップを少しだけ持ち上げ、そろりと隙間から覗けば、声の主はやっぱり大地さんで、なんでここに?という思いと、どうして不機嫌なの?という疑問が同時に湧いて、それ以上大地さんを見上げていられず目を逸らす。