恋した責任、取ってください。
 
「ありがとう、ございます……」


どういう態度を取ったらいいか分からないままにモゴモゴとお礼を言い、気を紛らわせたくて生徒さんの姿を探して通りに目を走らせる。

こういうふうに不意打ちで優しいことをされてしまうと、気持ちがグラグラして困る……。

弥生の言葉に色々考えさせられた結果、いつか大地さんが話してもいいと思えるようにしっかり態度で示すって決めたんだ。

“私”は“私”なんだと違いを分かってもらうためには、この方法しか思いつかなかった。


気持ちを引きずりたくないから思い切って“岬さん”呼びに勝手に戻したんだけど、もしかしてそれでちょっと不機嫌なのかな?

相談も無しなのはちょっとマズかったかもしれない。でも相談って必要なんだろうか……謎だ。

そんなことを考えていると、あちー、とぼやきながら手で影を作った大地さんが口を開いた。


「さっきザキも言ったけど、もっと頼っていいんだよ。ただでさえ恵麻の妊娠でなっちゃん一人に負担がかかってるのに、これ以上頑張ってどうするの。なっちゃんはもう十分やった。だから今日は肩の力を抜いて楽にやりなね」

「ん、でも、皆さんにはできるだけ子どもたちを見ててほしいですし、私にできることは、今日のバスケ教室を成功させることしかないですから。……役に立ちたいんです、私も」


大地さんの役に、とは到底言えない。

でも、これも本心だった。

せっかくの気遣いを突っぱねるような言い方になってしまったことに、我ながら卑屈だなと感じるけれど、ここまで準備してきたんだ、本番はなおさら肩の力は抜けない。


「はあ、もう……。なっちゃんって実は意外と頑固だよね。役に立ちたいなんて健気なこと言われたら、多少の無理なら目をつぶってもいいかなーって甘くなっちゃうじゃん」


キャップの上からポンと手を乗せ、困ったような、呆れたような口調で大地さんが降参する。
 
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