恋した責任、取ってください。
道の端の邪魔にならないところに移動してスマホを覗いてみると、受信時刻とともに目に飛び込んできたのは、たった一文だけのメッセージ。
【明日の俺を見てて】
送り主は、ずっとずっと連絡を待ちわびていた大地さんだ。
昼休みの時間を過ぎて少しした頃に受信していたということは、午後から始まる練習の間際にでも送ったんだろう。
シンプルな文面から1か月半ほど前に言っていた〝片付けなきゃいけないこと〟が片付いたんだとわかり、目にじんわりと涙が浮かぶと同時に長い長い安堵のため息がもれていった。
「そっか、よかった……」
思わずその場にしゃがみ込み、そう呟きながら両手で握りしめているスマホを額に当てると、機械のひんやりした温度の向こうから大地さんの思いが伝わってくるようだった。
待ってますと言った以上、詳しいことは聞かない。
そう決めて毎日を過ごしていたけど、本当は、今どうなっているか、ずっとずっと気になっていたから……。
【はい】
その一言にたくさんの思いを預け、頭上に無数に張り巡らされているクモの糸のような電波のひとつに私の返事を乗せる。
練習の真っ最中だろう今は、すぐに返事が来るはずもないのだけれど、でも。
今、私が心から笑っているように、練習を終えてメッセージに気づいた大地さんも笑顔になってくれたら。
そう思いながら送信完了の通知とともに立ち上がり、吐いた白い息の向こうに淡く光る冬の星の下を、帰宅する人の波に乗って歩き出した。