恋した責任、取ってください。
「それで」
ペットボトルの蓋を閉めると、膝の上のもんちゃんの頭を撫でながら佐藤さんが口を開く。
何を言い出すのかと思って見上げると。
「いつぞやはすみませんでした。犬、大好きなのに、ランニング中に急にもん三郎が寄ってきたからびっくりして、キツいこと言って。姿を見かけるたびに謝んなきゃって思ってたんですけど、なかなか声かけられませんでした」
じっともんちゃんの頭を見つめながら、一気に吐き出すように佐藤さんは言った。
「俺の足音が聞こえてくるとリードを手に巻きつけてるの、分かってたんですけど、あんまり女の子が得意じゃなくて。目つき悪いし、ザキさんや大地さんみたいに女の子と普通に話せるような性格でもないし。ごめんなさい、俺、今までずっと嫌な思いをさせてきましたよね」
「いえ!放してしまったのは私なので……!」
「それでも、あの時の傷ついた顔がずっと忘れられませんでした。もっと他に言葉があったのに、なんであんなこと言ったんだろうって、毎日自己嫌悪ですよ。今日、体育館で夏月さんに会ったとき、あの時の人だってピンときて。今日も散歩させてたら謝ろうって決めてました」
「そんなすぐに気づいたんですか!?」
「はい、まあ」
驚愕している私をよそに、佐藤さんは照れたようにヘヘッと笑ってほっぺを掻いた。
あの時のことを佐藤さんも覚えていて、2年近くも気にしていたなんて、ちょっと驚きだ。
てっきり気にしていたのは私だけで、ミスター・ランニングマンこと佐藤さんはとっくに忘れていたものだとばかり思っていたけど、大きい体とクールな風貌のわりに、意外とこういうところで気にしいなタイプだったんだ。
私のほうこそ、ずっと怖い人だと思い込んで、今日も全然気づけなくてすみません……。
「あの、でも、一つ訂正が」
言うと、佐藤さんの顔がこちらを向いた。