恋した責任、取ってください。
「今夜は赤飯でお祝いだなあ……」
ほくほくとした気分で呟く。
めでたい=赤飯、これニッポンの常識。
仕事から帰ったあとで赤飯を炊くのはなかなか体力的にキツいものがあるし、申し合わせているわけではないけど佐藤さんのランニングの時間にもんちゃんの散歩を合わせることが習慣になりつつあるので、帰りにスーパーに寄ってお惣菜の赤飯を買うのが、せいぜいだ。
でも、思わず声に出して言ってしまうくらい、大地さんの現役続行は私にとってとても意味のあることで、赤飯モノなのだ。
「赤飯より、ご飯行かない?」
「ごっ!?」
けれど、スーパーで売っていなかったらコンビニのおこわで我慢しようか、などと考えていた呑気な私の思考回路は、突拍子もない誘い文句でバッサリと斬り落とされてしまった。
自分でもびっくりするくらい奇妙な声が出てしまった私に、しかし大地さんはフワフワとした笑顔を向けていて、膝に手を当て私の目線まで屈むと、真っ直ぐに目を見て再度言うのだ。
「ご飯行こうよ。俺の奢りだよ?」
「ごはっ!? おっ奢り!?」
「好きなもの、なーんでも頼んでいいから」
「……」
ね?と可愛らしく首を傾げられても、どう返事をしたらいいのか分からないし、第一、私を誘ってくれる理由がちっとも見当たらない。
でも喉の奥では「はい」と頷く声の準備がすでに万端整っていて、私が口を開くのを今か今かと待っているというちぐはぐな状態だ。
答えは紛れもなくイエス。
だけど、少し冷静になって頭を働かせてみるとウチにはご飯と散歩を待っているもんちゃんがいて、頼みの綱の弥生は全く当てにならないという悲しい事態が起こっており、大地さんとご飯に行っている間中、もんちゃんが空腹と寂しさで鳴くならぬマジ泣きをしてしまうのではないかと急にハラハラしてきた。
「あの、ウチ犬飼ってて。同居してる妹に世話を頼めるか聞いてからでもいいですか?」