恋した責任、取ってください。
 
すると、私の前にイカの酢味噌和えの小鉢をスススとスライドさせた恵麻さんが、何の脈絡もなくニヤニヤした顔をこちらに向けてきた。

はて?と思っていると。


「ね、ところでなっちゃんは、あのヘタレ大地と爽やかソウ君と、どっちがタイプなの?」

「へっ!?」

「私を見たら分かると思うけど、ウチは恋愛禁止じゃないから好きなようにくっ付いてくれて構わないんだけど、身内からすると断然ソウ君を推したいわけ。ぶっちゃけ、どうなの?」


と、グイグイ聞いてきた。

確かに恵麻さんの旦那さんはコーチだし、恋愛禁止ではないんだろうけど、なんで佐藤さんの話が出た途端、話の方向性が恋愛方面に……。

例の大地さんと何かあるっぽい選手のことも聞きたいところだったのに、恵麻さんの意図するところが全く見えてこないんですけども。


「え、えーっと……」


でも、聞かれたからには答えないとと責任のようなものを感じて、とりあえず目の前にある酢味噌和えに箸を付けつつ時間を稼いでみる。

大地さんに一目惚れしたんですって言ったら笑われるだろうか、まだ処女なんですって言ったらドン引きされるだろうか……それどころか初恋なわけなんだけど、私みたいなタイプって色々な意味で女として大丈夫なんだろうか。

その間、私の脳内では、小鉢の中でくるんと丸まっているイカゲソよろしく様々なことがグルグルと渦巻き、ゲソと見つめ合ってしまう。

この機会に全部白状してしまったほうがいいんだろうかとも気持ちが揺らぐけど、ちらりと横を窺うと恵麻さんのお綺麗な顔があるわけで、なんだか変に彼女との“女の差”を意識してしまって、うまく言葉が出てこなかった。

と。


「二股はダメよ?」

「そんなっ‼ 私は大地さんだけで--あ!」

「そっかぁ、なっちゃんは大地かぁ~」

「ううっ……」


上手く恵麻さんに嵌められ、激しく動揺。

恵麻さん策士!
 
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