恋した責任、取ってください。
 
初歩的なカマカケにまんまと嵌った私を、恵麻さんは「なっちゃんバカね~!」と若干傷つくくらいに遠慮なく笑うけど、こちとら、あまりの恥ずかしさに顔を覆って悶えるのみだ。

だって恵麻さんは直属の上司であり大地さんのお姉さんなのだ、この微妙な立ち位置といったら、なんと言葉で表現したらいいのやら……。

けれど、スッと笑いを収めると彼女は言う。


「言いにくいんだけど、相手が大地だと一筋縄ではいかないかもしれないわね」

「え……」

「まあ、27年も生きてると色々あるってこと。知りたかったら大地に直接聞いてみて」


そう言って、私の頭にポンと手を乗せた。

恥ずかしさのあまりに恵麻さんにも飛び火しそうなほど放熱していた体の熱が、冷水を浴びせられたみたいに一気に冷めていく感覚だった。


確か前にも、恵麻さんに言われた覚えがある。

ブルスタ選手のほうでの歓迎会を開いてもらった翌日、生まれたての何かのようにフラフラしながら出勤した際、その訳を彼女に聞かれ、酔っ払って寝てしまった私を大地さんがおんぶで送ってくれたらしいと話したとき--。

『いくら双子でも、ここからはプライバシーだから。もしも本気で気になるなら大地に直接聞くれる?』と、そう意味深に言ったのだ。


応援するでも、教えてあげるでもなく、あくまで中立的な立場を崩さず、けれど少しずつヒントめいたものを授けてくれる恵麻さんは、一見すると何を考えているか分からない。

でも、一筋縄ではいかないかもしれないとは言ったけど、はっきりと「大地はやめたほうがいい」と言わないということは、私の頑張り次第では可能性はゼロではないと思ってもいいんじゃないかと、そう期待してしまう感がある。

いかにも恋愛若葉マークの初心者が行き着きそうな都合のいい考え方だけど、でも今は、その不確かな期待にしがみつくしかない。

だって私は大地さんが好きだ。
 
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