恋した責任、取ってください。
そしてまた素敵な王子様に出会える日を胃薬を飲みながら待ち、私の全てを捧げる。
ファーストキスも、バージンも、人生も。
24歳にもなって全く経験がないのもなんだか恥ずかしいのだけど、好きになれる人もいなかったし、そもそもがチビでメガネで消極的に後ろ向きなのでモテるはずもなかった。
苦学生というほどではないにせよ、やっぱり生活費もある程度は自分で稼がないといけなかったから、大学といくつも掛け持ちしているバイト先との往復で走馬灯のように日々は流れ……。
あれよあれよという間に、24歳にして初恋もしたことのないメガネっ子が誕生したと。
そういうわけだ。
岬さんの隣、空いてるのかな。
せめてそれくらいは知っておきたいな。
そう思っていると、ふいに廊下の向こうから女性の声で「大地!」と大きな声がかかった。
それは私の前方から、岬さんからすると背中のほうからかかった声で、ちょうど私の目的地であるチーム・ブルスタが割り当てられている部屋のほうから聞こえてきたもの。
名前を呼ばれた岬さんは、ゆっくりとした動きで振り向くと「……おー、どうしたエマ」と。
どこかバツが悪そうな態度と声色で廊下をこちらに向かって歩いてくる女性に訊ねながら、近くまでやってくるのを待っていた。
岬さんの脇からひょっこりと顔を出して様子を窺っていた私は、しかし彼女が岬さんの前で立ち止まった瞬間にある重大なことを思い出す。
もしかして私、遅刻してるんじゃない!?
今何時!? まだ間に合う? アウト?
「大地、アンタにはまだまだ頑張ってもらわないと困るんだって。ウチのチーム、大地がいてくれないとリバウンドがガタガタなのよ」
「だからそれは、新しいセンターが見つかるまでは責任持ってやるから。俺のほうでも何人か声かけてる奴もいるし、そんな怒んなよ」
「そういう話じゃないんだってば」
「じゃあ、どういう話?」